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バルセロナ、理想から現実への後退

 バルセロナはチャンピオンズリーグ決勝でアーセナルを2−1で下し、念願のビッグイヤーを獲得した。これでリーグ優勝を合わせ、今季2冠達成となり、世界のサッカーシーンを席巻した感がある。バルセロナがこれら多くの賞賛を得ているのは、その結果だけでなく、内容も伴っているからだと言われている。しかし、果たして本当にそうなのだろうか。私にはそう思えない。
 リーガエスパニョーラが開幕して、バルセロナ布陣の昨季との大きな変更点は、右サイドバックのファーストチョイスが、ベレッチからオレゲールに代わったこと。これは、エジミウソンが負傷から戻ってディフェンシブハーフの位置、つまりアンカーに入り、昨季までそこを務めていたマルケスがセンターバックに回ることになったことも大きく関係しているが、この変更の真の目的は右サイドのディフェンスの強化だと考えられる。オレゲールは元来センターバックのため、ボールを持っても一対一の勝負を仕掛けるわけでもなく、オフ・ザ・ボールの動きにも乏しく、オフェンスにおいて、大きな働きは期待できないからだ。さらに上述のアンカーだが、ボールのフィード能力の高いマルケスに比べ、エジミウソンはほぼディフェンス専業である。さらにチャンピオンズリーグではこれに加え、リーグ戦ではスタメンの機会の多かったシルビーニョに代え、左サイドバックにファン・ブロンクホルストを起用している。ファン・ブロンクホルストも元々はディフェンシブハーフの選手で、サイドの選手ではない。これらの意味する事は、バルセロナがよりディフェンシブになり、安定した試合運びを狙うチームに変貌を遂げたということである。さらにこの状況をはっきりとさせたのがシャビの負傷による長
期離脱である。シャビの穴埋めは、よりオフェンシブではあるが、ほぼ同タイプのイニエスタが務めると思われたが、実際多く起用されたのは、ファン・ボメルであった。ファン・ボメルはオフ・ザ・ボールから前線に飛び出していく動きはみせるものの、ゲームをクリエイトするタイプではなく、とちらかというとディフェンスを頑張る、ファイタータイプの選手である。なぜこのような起用になったのか、おそらくライカールト監督の頭には、カウンターに沈んだ昨季のチェルシー戦が脳裏に浮かんでいたのだろう。ヨーロッパを勝ち抜くためには、より安定感のあるチームにならなくてはならないと考えたのだ。この現実路線化は、ロナウジーニョやエトー、さらには新星メッシーらの超絶技巧によりかき消されているようにみえるが、事実なのである。もちろんタイトルを勝ち取るための軌道修正はなされるべきであり、加えてバルセロナはビッグイヤーから10年以上も見放されていたことからも、決して非難されることではない。しかしながら、世界のサッカーファンが望むのは、スペクタクルであることも忘れてはいけない。そしてそれを実行できる戦力、ポリシーを持っているのは、現在バルセロナだけであることもまた、忘れてはいけない。ビッグイヤー獲得という念願を果たした今、世界のサッカーファンのため、バルセロナにはもう一度スペクタクルな内容で勝利するという理想に立ち返り、来季望んで欲しい。
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